教師のエマッドは妻ラナとともに小さな劇団に所属し、アーサー・ミラー原作の舞台「セールスマンの死」の稽古で忙しい。

二人が住む家は老朽化が進みある日、退去を余儀なくされるが劇団仲間紹介してくれたアパートで移り住むことができ、新しい生活を始める。

ある日、舞台の稽古を終えたラナは一足先に、自宅に帰るがそこで侵入者に襲われ二人の生活は一変してしまう。



アスガー・ファルハディ監督最新作。
映画好きな方は、結構知っている人も多く、評価も高い。
残念ながら、「別離」も「ある過去の行方」も観たことがないため、これが初見。

なるほど、映画好きが好みそうだ。


というのが、第一印象です。

ただ映画好きの度合いが浅はかな私は、これといって唸らせるような感想をいうことが出来ない。

や、これは語彙力の問題かもしれない。


ラナはある悲惨な事件に巻き込まれるのですが、イランというお国柄の検閲の厳しさなのか、映画の意図なのか、全容が全く描かれていない。

それが逆に映画のスリリングな部分や、人間の二面性を見え隠れさせるのにとても効果的になっているように思う。

ラナに対する心無い言葉がものすごく苦しくなるシーンが多いが、男女平等が進んでいると思われる今の日本においても、こういった犯罪には未だに、「被害者にも何らかの非があるのでは」なんていう見方は、消え去ったとは言い難いと思う。

物語をさらに面白くさせるのが、彼らが劇中、舞台で演じるアーサー・ミラーの「セールスマンの死」。
このお話は、実在する有名な戯曲。
私は読んだことはないのですが、この映画にとって非常に重要な役割を果たしている。
物語は、第二次世界大戦後のアメリカ。年老いた63歳のセールスマンが目まぐるしく変わる社会情勢に悩み、最後には自ら命を絶ってしまうという話。


映画「セールスマン」に出てくる夫婦は、生活はさほど困窮していない、いわゆる中流階級の夫婦。

一方、舞台「セールスマンの死」は労働者階級の男の話。

その男を、夫のエマッドが演じる。
この巡り会わせが、物語の最後の展開よより面白くさせている。
伏線というものかな?


最後まで姿を見せない新しく住んだアパートの前の住人。
荷物を多く残しており、その荷物から小さい子供を持つシングルマザーだということがわかり、近所の住人の話によれば売春のような仕事をしていたという。
ラナの事件はこの前の住人の秘密と密接に関係している。

そして、舞台「セールスマンの死」にも売春婦が出てくるシーンがあり、セリフなどがリンクする。

ん~~。
これは、観た後答え合わせのように話したくなる作品ですね。


あと、この日本でも人気のアスガー・ファルハディ監督。
何度も宣伝のために日本への招待をしているが、一度も来たことがないらしい。
日本嫌いか、興味がないか。

ちなみに主演女優のタラネ・アリドゥスティさんは米大統領のトランプさんが大嫌いでアカデミー賞授与式へのボイコットをTwitterで表明し、大きな話題となりました。
日本には来日してくれているので、日本は嫌いじゃないようです。


宇多丸さんは、「アスガー監督の子役使いのうまさは、日本で言うとことの是枝監督に匹敵する」と言ってました。

検証してみてはいかがでしょうか?